病室に戻ると、部屋に誰かがいた。
荻野君を待っていたみたいだった。
年配の夫婦連れで、二人は荻野君の姿を見て息をのむようにして一瞬声を詰まらせた。
最初に女性の方か声をかけてきた。
「伸二?」
「おじさん、おばさん」
彼も、二人に答えた。
おじさんだなんて言わなければ、本当の親子だと思っただろう。
この夫婦と荻野君の間には、特別の関係が出来ていると思える。
「お前、大丈夫なのか?」
二人とも、荻野君に駆け寄って彼に声をかける
心配する姿は、彼のことを本当の息子だと思っているからだろう。。
「うん。手術も終わったし、もう退院できるよ」
「そうか。よかった」
「彩香に会わなかった?お花を持ってきたから、生けてくると出て行ったけど」
荻野君がおばさんと呼んでいた女性が言う。
「ここは、花瓶も何もないからな」荻野君が答える。
「それより、入院の準備はどうしたの?全然連絡して来なくって」
「彼女に全部やってもらったから、大丈夫」
「彼女?」
3人が一度に私の方を向いた。


