見た目がよく、頭も切れるんだけれど、彼は、人に教えてもらうということに慣れていなかった。

今も私を見下ろして、平然としている彼。
彼が、新人君だった頃、私は苦労させられた。

彼自身も、学生時代と違ってやり方がよく分からないのは当然だけど。

普通は、こちらが教えたことを、そのまま真似てくれる。

彼はそうではなかった。



『それ、無駄じゃないですか?』
『無駄っていうんなら、他にいい方法はあるの?』
『具体的には……考えてませんけど』
『なら、考えてから意見しなさい』

プライドの高い彼は、何も考えずに、言われたことをそのままやる事が好きではなかった。

納得してくれるまで議論しないと、言うことを聞いてくれなかった。

そんなふうによく突っかかって来た。

そんなところからして、普通と違う訳だけれど。


私には、彼が教えられたことを理解はしても、覚えたことをそのまま真似するのを嫌った。

それに、素直に教えてくださいと言えないところがあった。