二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

荻野君……よかった。
目を開けてくれて。

「看護師さん呼ぶんだろう?
意識が戻ったらすぐに連絡くださいって、さっき言ってたじゃないか」

ああ、本当にしっかりした彼の声だ。

もう一度聞くことが出来たんだ。


「うん。そうだったね。
なんで知ってるのよ。目つぶってたはずなのに。聞こえてたの?」
嬉しくて抱きしめたくなるのをこらえる。

「ん、聞こえてたよ」
と彼が笑った気がした。

何でもないことなのに、こうして生きて笑ってくれるだけでうれしい。

「か、看護師さん、呼んでくる」
私は、立ち上がろうとした。

「ちょっと待って」

荻野君が握っていた私の手をつかんだ。

かみ方は弱かったけど、力はしっかり伝わった。


彼が私の顔を、しっかり見ている。

「森沢さんが言ってた特別な人って、誰のこと?」
真剣な眼差しだ。

誤魔化さないで答えて欲しい。そういう目をして聞いてきた。


私は、どう答えていいのか分からなくて、逃げるように言った。

「ちょっと待ってて、看護師さん呼んでくる」