二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

「敏子さんには、私から話します」

「ごめんなさい」


母が気持ちを切り替えるときのように、背筋を伸ばす。

「ところで、あなたは入院の準備はしたの?」

「準備って、着替えはしたし……」自分が着替えたってことを知らせるために、母に来ているものをよく見えるようにする。

「なに言ってるの。違うでしょう。あんたのじゃなくて、彼が目を覚ましたらいろんなものが必要になるでしょう?」

「はい」そうでした。
そばにいることしか、考えていない。


「彼、なんていう名前なの?」


「荻野伸二さんっていうの。この人は、職場の私の上司」


「そうですか。今後どうするのかは、二人で話し合いなさい」

「はい」

「一度、彼の家に行くか、どこかで必要なものを買ってくるといいわ」

「はい」母はいつまでたっても、教師だった。

でも、こういう時はすごく楽だと思った。