二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

白衣の男性がやってきて、荻野君の前に書類を差し出している。

「これから輸血を開始します。輸血にはリスクがありますので、サインをお願いします。これがその同意書です」

やり取りする様子が、見える。

荻野君、意識はあるみたいだった。

医師が、彼の反応に手振りで答えている。

医師は荻野君の手にペンを握らせて、そこに何かを書かせていた。


サインを書き終えると、白衣を着た男性が私の方に来た。


「ご家族の方ですね?」
医師にそう尋ねられた。

私は曖昧に頷くと、これからの処置について説明しますと言われた。


「ご主人には、このあと輸血が開始され、胃にチューブを入れて、胃から血を排出する作業を行います。
胃の血液をすべて排出して胃を洗浄してから、手術することになります」

「手術ですか?」

「はい。内視鏡で状況を確認しながら進めていきますから。手術は鈴木医師が担当します」

医師はそう言うと、荻野君の方に戻って行った。

荻野君の体、は数々の器具を装着されたまま別の部屋に運ばれていった。


呼び止めて、治療を中断するわけにはいかなかった。

彼と話をすることが出来ないまま、運ばれて行ってしまった。