二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

高岡さんにすぐに救急車を呼んでと言われて、電話をかける。

どうしましたか?

と尋ねられても、言葉が出てこない。

落ち着いて。
早くしなきゃ。

相反することを同時にすることが難しくって、そんなことをしている間に時間が過ぎて行ってしまうことに苛立ちを覚える。


足がすくんでしまって、体が動かない。

高岡さんが、お店に指示を出して、テキパキとすべきことをしていってくれる。


何が起こったのか、頭が混乱してどうしていいのか分からない。

このまま、荻野君が起き上がらないんじゃないかと思うと、恐怖で身がすくんでしまう。


「口の中に吐き出したものが詰まってないか見た方が……大丈夫か?」
高岡さんに言われて、荻野君の顔をタオルで拭く。

彼の上半身は、吐き出した血で赤く染まっていた。

こんなに大量の血。



救急車が来て、救急隊員の一人が荻野君に話しかける。


救急隊の人は、荻野君の血圧や吐いた血の量など見たままを無線で連絡している。

そして荻野君の状態を「吐血とショック」と説明した。


荻野君は、担架に移され固定された。

救急隊員から、どなたか一人一緒に来てください。
そう言われて、私が救急車に乗り込んで付き添うことにした。


「こんなになるまで放っておいて」
高岡さんが、汚れたタオルを拾いながら言う。

荻野君は、高岡さんにそう言われて、わずかに目を開けた。

「何も言うな」高岡さんが声をかける。

隊員の一人が、高岡さんに言葉をかける。

「胃を気にしていたし、食事は全く手を付けていない」

動揺していた私の代わりに、高岡さんが今日の様子を救急隊員の人に説明してくれていた。

「あんなに血を吐いて……」私は、震えていた。

「大丈夫か?俺もついて行こうか?」
高岡さん、勇気づけるように声をかけてくれた。

「大丈夫です」私が、何とかしなきゃ。