予約してあった個室に通されて、五人とも和やかに会話が始まった。


席についてすぐ、加藤さんがたまらず私に聞いてきた。

ほかの人に聞こえないような小さな声だ。
「高岡さんとどういうい知り合い?」

「えっと」
何と答えていいのか分からず、私は高岡さんの方を見た。


「俺の見合い相手。それで、現在交際中」
答えちゃったけどいい?
いたずらっぽく笑っていながら言う。

「見合いしたの?」
加藤さんが驚きを隠さずに言う。

「いつの間に?」長堀さんも突っ込む。

「いつ頃かなあ」
高岡さんがとぼけて言う。

「工場に見学に行ってからすぐ」
私が答えた。

「本当に?それで、まだ続いてるんだ。ということは、ゴール間近?うそだろう?」
加藤さんが隣に座ってる、荻野君を見る。



荻野君は、加藤さんの視線には応えず、黙って最初に出された水を口にしている。

嫌な予感がした。

加藤さんの反応を無視したんじゃなくて、荻野君に気付く余裕がないんじゃないかって気がしたからだ。