「食事できる?」
心配して尋ねた。
一応、何ともない振りしてるけれど、平気じゃないはずだ。
「何とか」
いつもより口数が少ない。
痛そうに、背中を気にしている。
「大丈夫よ。無理だったら、私がたくさん食べてあげるから」
「それは頼もしいね」
高岡さんの前で、食事をとりわけるなんて荻野君がするわけないと思うけれど、一応提案してみる。
接待なんて、あらためてすれば?
そうも言ってみたけれど、荻野君、誘われて断る気は一切ないみたいだった。
胃薬を買ってあげてから、病院へ行ってくれてればいいのだけれど、今朝もまだ、同じ薬を飲み続けているから、それもないだろう。
高岡さんは、近くの日本料理屋に連れて行ってくれた。
「今度、一緒に行こうと思ってたんだが、先に来てしまったね?」
店に入るとき、高岡さんが私の背中に手を添えていう。
「森沢さん、えっと、君って……」
研究所の加藤さんが、その光景を目撃して言葉をなくした。
「どういうこと?」
加藤さん、荻野君のほうを見ている。
あの時は、荻野君の恋人としか見えなかったのに。
途中経過を聞かされないまま、別の男性にエスコートされているのを見てギョッとするのも無理はない。
しかも、荻野君の目の前だというのに。