そして、後日、改めて話し合いの場が持たれた。

東京駅の近く、丸の内にある、丸菱商事本社ビルの繊維部に通された。

このあたりの区画整理に伴って、丸菱も自社ビルを新しく建て替えていた。

商業施設も入った、40階建ての大きなビルで、このあたりの観光名所になっていた。

上と下が商業施設が入居していて、その中間がオフィスになっている。


本社ビルの繊維部会議室に集められたのは、5名。

うちの会社からは、荻野課長と研究所の加藤さん。そして私。


丸菱側からは、高岡さんと繊維部のテキスタイル部門の長堀さん。

名刺交換をして、高岡さんがリードする形で話し合いが始まった。


「うちの系列の会社の生物工学研究所が、培養細胞の開発を行っていて、染色技術の開発に携わってます。

バイオ染料は、天然色素が均一に、かつ大量に生産コントロ-ルされるという可能性を秘めているんです。
将来性のある分野です」

長堀さんが説明してくれる。
長堀さんは、30代前半の落ち着いた感じの男性だ。

高岡さんと並ぶと、積極的に行動していくタイプの先輩と、落ち着いて慎重に進めていく後輩のいいコンビといった感じだ。