二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

会議が終わり、みんな自分の席に戻って行った。

「すまない」
みんなが出て行くと、彼は、背中が痛いと言って倒れこむように椅子に腰掛けた。

荻野君は誰もいなくなると痛みに耐えかねて、苦痛に顔を歪めた。
私には、平気でこういう姿を見せる。
やせ我慢して見せても、すぐにバレると分かっているのだ。


私は見かねて、会議室のドアを閉める。


「相当悪いんでしょう?さっきから、背中の辺りに手を当てるのね。痛むの?」

「森沢さん、悪いけど俺のカバン取って来てくれないかな?」
下を向きながら言う。

「薬が入ってるのね?」

彼に言われた通り、彼のデスクにあった鞄を抱えて、自販機で水を買った。

私が鞄を持っていくと、だるそうに起き上がって、中から市販の胃薬を取り出す。
もどかしそうに手に取り出すと、口に入れて水で流し込みながら飲み込んだ。

「いつからこんなふうになってるの?」
市販薬を飲んでるから、病院には行ってないんだろう。

「大丈夫。これ飲めば少し楽になるから」
薬の箱、空になりそうじゃないの。

とても、昨日から急に痛みだしたって様子には見えない。

「あまり食べてないよね。食事できないの?」

「本当に大丈夫だから」
彼は、そういうと痛みが治まるのを待って、私の忠告も聞かずに出て行った。