二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

「今回は、ineさんの希望で、生地の原料だけでなく、染料の方も天然の染料を使って染めようということになって、バイオ染料を使う予定でいるんだ」

また、胃の上に手を当てる。
荻野課長、痛みをこらえてるらしい。
大丈夫かなと心配になる。

「えっと、当初考えていた首都圏だけの販売ではうまく回っていて、全国規模になると生産が追い付かなくなるのは、なぜですか?」
私が質問した。

「染料の量が確保できない」荻野課長がやっと言う。


「染料?なんでですか?」
白石君が言った。

「う~ん、バイオ染料ってのがネックなんだろう?」
新井さんが代わりに答える。

「そうだ。本来、。均一で大量生産する工業染色には不向きだし、植物染料を、大量に培養する技術を持っている施設も限られる」
荻野課長を見ながら、加藤さんが答える。

加藤さんが続けて言う。

「化学染料は同じ色素を、取り出すことができるので、品質管理をちゃんとすれば、同じ製品を出荷することができます」


「でも、バイオ染料はそうはいかないんだ」と白石君。

「じゃあ、その施設を持っているのは?」
新井さんが先回りして質問する。


「外国の企業と、国内では大手の丸菱化学工業」と加藤さん。


「丸菱って、あの丸菱商事と同じ系列の?」
白石君が目を丸くする。

「ああ」
加藤さんが考え込むように腕組みした。