その日は、午後に入ってからすぐに、会議が予定されていた。
花梨ちゃんが、大事そうにファイルを抱えて入って来た。
白石君が私の横に座った。
「森沢さん、前回って、この件どこまで進んでましたっけ?」と聞いてきた。
「ポリ乳酸繊維の染色が上手くいっていないっていう件なら、進展してないかも」
面倒なので、結論まで答えた。
「染材の品質が一定しないとか、染材の供給が安定しないっていうやつでしょう?」
「ええ、すごく簡単に言ってしまえば、そうね」
「そんなこと、分かってたのに」
あっさり断れよ、そう言いたいんだろうな。そうかもしれない。
「一応、研究のめどが立ったから、会社からゴーサインが出たんだけど、始めて見たら細かな調整が必要になったってことよ」
「ふ~ん」と言いながら、資料に目を落とす白石君。
でも、ビジネスチャンスがあれば、何もしないわけには行かないのだよ。


