二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

「今日は、やけに突っかかるじゃないか」
たまりかねて、高岡さんが私からの追求に待ったをかけた。

私は、言いたいことを思ったまま述べる。

「高岡さんはさあ、へタってるだけでまだ、可能性あるじゃない。私の方は、もうダメだな」

「なんかあったのか?」

私は、特大のため息をついた。

「そこ、聞き流してよ。触れてほしくないです」

「なんだよ。俺ばっかり責められて」

言葉に出したくなかった。
出したら、本当のことになりそうで。

「何とかするって言ってくれたんだけど、どうにもならない模様なの。多分、彼は彩香ちゃんに振られるまで気長に待ってると思うな」

「なんだよそれ」

「だから、最後通告しちゃった」

さすがに、涙なしには話せない。
私だって、もう限界だった。

「なに?」

「別の人と婚約するから、私のことは考えないで欲しいって」

「そいつにいったのか?」

「うん」

「そうしたら?」

「分かったって」

「ええっ、そいつ納得したのか?」

「うん」

「うんって」
彼が、気の毒そうに見つめてくる。

「だって、そういうの最初から分かってたもん。そういうの分かってて、彼に何とかして欲しいって頼んだんだもん」

「バカだなあ。なんで結論なんか急ぐんだよ」

「あのねえ、時間がないってわかってる?お兄さん、女には時間がないのよ。そこんとこ分かってないのよ。あ~あ。高岡さんの彼女もそう思ってるんじゃないかな」
私は、高岡さんのネクタイに復讐した。

それがせめてもの抵抗だった。

私たちは、別々のタクシーで家まで帰った。

もう、こんなになるまで飲むもんじゃないなと思った。