二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~



いつもの規則正しいキーボードを叩く音、電話で誰かが話してる声。
眠くなるような、暖かな日差し。

それに、オフィスの快適な空調。

私も、チェックしなければならない資料と、1時間もにらめっこしたまま。

こんな時間がずっと続くと、どうでもいい雑念に頭の中が乗っ取られてしまう。
特に、午後を過ぎてお腹も満たされてるときは。


『じゃあ、あなたが決めるってことよね』

私が決めればいいのだ、と叔母が言う。

叔母は、さりげなく自分の考えを伝えてくる。

母や敏子さんとは違って、こうしなさいとは言わない。
だから、叔母のやり方は押しつけがましくない。

聞きたくなかったら、それでもいいんじゃない?というスタンスだ。

でも、放っておいていいのか?
と言えば、決してそうではない。

逆に言うと、崖っぷちの状態。
そのまま行くと崖から落ちるけど、それでもいいの?

こんな時は、何がなんでも自我を通すのは良くない。
30年も生きていれば、大なり小なり崖から落ちた経験から、学んだことはたくさんある。


叔母が言ってることは、
『このままいくと、思ってもみなかった人生を歩むようになって、そうなったら、元に戻るのは難しいけど、本当にそれでいいの?』
という意味だ。


私の性格がいい加減で、自分に降りかかってくる厄介事から、できるなら避けて通りたいと思ってる。叔母は、私のそういうところをよく知っている。