荻野君は、以前なら相手が誰であろうが、周りの女の子にああいう態度を取られることを嫌がった。
可愛そうなくらい相手の女の子に氷のような冷たい視線を向けて、そういう人が近づかないようにしてた。
彼の甘いマスクから想像できないけど、内面は辛辣で手厳しい。
「我慢してるの?それとも気にならなくなった?」
「我慢しているうちに、気にしてない振りはできるようになったってとこかな。前に一緒に組んでた女の子に、泣かれて、なだめるのに本当に苦労したんだ」
「そう。いろいろ学んだのね」
「課の責任者になってしまうと、辛辣で手厳しいことは表に出せない。部下には、そんなふうに対応できないよ。君以外はね」
前は、それがアンバランスで危なっかしく見えたけど、今は上手くバランスを取ってるね。
その上、平田さんをメンバーに入れたように、いろんなものを引き受けなければならないのだ。
彼女が、どういう立場にいるのか分からないけれど、荻野君に圧力をかけられる立場の人間が身内にいるのだろう。
こういうところは、古い体制の会社だから仕方ないと、私達社員もあきらめている。


