「どうしようか……」

こなってしまって、高岡さんも当てにできなくなっている。

彼も好きな人と上手くいっていないから、少々ヤケになっていて、このまま流されるのいいかなんて言い出してるし。


上から、声が降って来た。

「決まらないのか?」

「ん?」

いつの間にか、すぐ横に荻野課長が立っていた。

ぼんやりしてた。ぼんやいなんてもんじゃない。

いつもなら、彼が近づいて来ないうちにどうにかするのに。

「サンプルのこと?」
彼は、パソコンを見つめたままでいる。

パソコンの画面は、真っ暗だ。
これじゃあ、ぼうっとしてたのバレバレだ。

「すみません」

慌ててマウスを動かそうとすると、右手にふわっと彼の大きな手が重ねられた。

「あの、課長、大丈夫です」

「困った時くらい、相談してくれ」

「はい」

技術的な質問なら、新井さんに聞けばよかった。

課長に頼るのは、判断が必要な時だけど、書類を渡して見ておいてくださいで済んでいた。彼に判断を仰ぐようなことは、幸いにも発生してない。

あったとしても、新井さんから聞いてもらうようにしていた。

課長からすると、避けてるって思うかもしれない。