「誠、葉子さんはともかく、あんたはしっかりと今回のことを受け止めなさい」
怒ってるいるわけじゃない。でも、有無を言わせない強いい方だ。
でも、人に言うことをきかせるときの、ドスのきいた声。
彼女は、優しく私の方を向いて言う。
「静ちゃん、葉子さんのお母さんねえ、死ぬほど心配してるわよ」
「はい。すみません。すぐに連絡を……」
「そうね。そうするといいわ」
はい、と返事をして、私は、敏子さんの方を向く。
「えっと……あの、私たち」
敏子さんは、自分の息子の方を向くことで、私の言葉を途中で遮った。
「誠、あなたは分かってますね。きっちりと一人前の男性として、責任を取りなさい」
「はい」彼は、真剣な表情で頷いた。
「ええっ?ちょっと、はい、って?どういうこと?」
高岡さんに、聞こえるだけの小さな声で言う。
「一晩、一緒に過ごしてもいい仲なら、結婚してもうまくやっていけるでしょう?ね、葉子ちゃん」
「えっ、今、なんておっしゃたんですか?敏子おばさま?」
「静子さんに早く連絡しなさい。一晩中、眠れないって言って、私のところに電話をかけて来たのよ」
「はい。すみませんでした」高岡さんが頭を下げた。


