「別の人を探せばいい、
そんなふうに簡単に言うけど、
気持ちをスイッチみたいに、
つけたり消したり、自由に変えることが出来たら、誰も苦労したりしない」
彼は、力説する。
私も、そうだねと頷く。
同じ痛みを抱えてるもの同士。
分かり合えるって心地よい。
「なんですか、そんなにすんなり諦めちゃって。せっかく、私、高岡さんと違って、前向きなこと考えたのに」
高岡さんも、私も笑った。
「じたばた苦しんで、諦められずにいて。
他を探して見てか……これからだもんな。まあ、がんばれとしか言えないな」
高岡さんが饒舌になって来た。
私を励ましてくれてるんだろうけど、ふと我に返った時の、寂し気な表情が気になった。
どこかクールに見えてたけど、胸の内に、こんなに、苦しい気持ちを抱えていたなんて。
「世の中広いんですから、まだ探しようがあると思いますよ」
そういうことについて、私は、ありきたりの事しか言えないですけど。
「わかったようなこと言うなよ」
それはもっともだけど。
「すみません。高岡さんの言う通りだと思います。
でも、そう思っててもダメじゃないと思います」
「思うのは勝手さ。でも、簡単じゃない」
「ずいぶん、はっきり言いますね」
「十年も、こんなことしてるからな」
「そうですか……」
「君の彼も、頑固なんだろうな」
高岡さんに、その通りですよと答えた。


