六年前新入社員で入って来た時だって、厄介だと思ってたのに。
あの時より落ち着いて魅力的な男性になった今は、もっと扱いにくくなっている。
なんて、ぼんやりしてたら彼と目があった。
どうかしたのか?って顔で見てる。
もしかして、ずっとそうやって私のこと見てた?
「森沢さん?」
「えっと、はい。何でしょう?」
声だけ耳に届いてたけど、中身は全然頭に残ってない。
「何か、考え事?気になることがあったら、はっきり言ってくれ」
そう言われましても。
「うん。ちょっと……どういう体制で営業するのかなと思って」
取りあえず、適当なことを言う。
彼は、もっともだって顔をして頷く。
「主任と白石は、客との交渉には慣れてるけど、最初は、商品知識を身につけてもらうことになる。まあ、その辺りのことは、新井さんに知識を伝授してもらうように、頼むつもりだけど」
「はい」
荻野君は、平田さんの方を向いて言う。
「花梨は、みんなの補佐だぞ。仕事が出来なきゃ別の人と変わってもらう」
彼は最初から、さばききれないほど契約が舞い込んでくるわけじゃないから、少しずつ慣れていけばいいと付け加えた。
「はい」花梨ちゃん、荻野君をまっすぐ見つめて言う。
「じゃあ、会議はこのくらいで。詳しいことは個別に説明します」
メンバーが席を立つと、後ろから荻野君に声をかけられた。


