「いったいどうしたんですか?」
責めてるわけじゃないって、分かるように優しく言う。
「たまらんなあ。もう、十年になるか」
くたびれたなあ。
口には出さないけど、そんなため息をついた。
「十年ですか?」
はっきり意図した訳じゃない。
意味の通じない言葉だけど、無理に聞き出さずに、私はただ、黙って頷いた。
「もう、バカだよなあ。ずっと諦めないでしつこく思ってるって」
急にこの人の横顔が、可愛く思える。
「そんなことないと思います。一人の人をずっと思ってるなんて」
自然に聞こえるように、控えめに答える。
「そうかな。やっぱり、葉子ちゃんはいい子だな」


