「高岡さん、ちょっと待ってください」
私は、混乱しそうになりながら必死で考える。
これは、一方的な俺の考えだけど、と断って彼は話し出した。
「君に対して、ダメだってところはないんだ。
君と結婚するのにしても、俺の方は反対する理由は何もない。
むしろ、君と結婚した方がいいんじゃないかって、思えてきた」
高岡さん、何か様子がおかしい。
なんか弱ってる。
いつもは、こんないい加減な考えをする人じゃないと思うんだけど。
私は、一息ついてから言う。
「どうしたんですか?結婚は、しばらく考えられないんじゃなかったんですか?」
「もう、いいよ。誰かと結婚しなきゃいけないなら、君がいい」
ずいぶん、後ろ向きな考えになってる。
「ずいぶん、消極的な理由ですね」
「これからでよかったら、俺と恋愛してみるか?」
ふざけて、ビールを傾ける。
「心にもないこと言わないでください」
「でもなあ、君もそうだろう?本気で好きな相手と、誰もがみんな結婚できるわけじゃない」
天井の方に顔を向けて、もう、諦めましたって顔して言う。
「努力は、すべきじゃないですか?」
「俺は、ずいぶんしてきたつもりだけどな」
「ずいぶん弱ってるんですね」
「はあっー。弱ってるなんてもんじゃない。息も絶え絶え……ほとんど死んでるっていうの」
ため息をつくと、空になったビールのジョッキをじっと見ている。


