「あの……」
手に取った箸をテーブルに置いた。
彼の方も、気付いてまっすぐ私の方を見る。
しばらく考えてから、彼が言う。
「見合いの件か……」
「はい」
彼は、顔をあげずに言う。
「止めたいってこと?」
私は、静かに頷いてから、声に出した。
「はい」
「まあ、そうだよな……」
彼は、腕組みをして考え込む。
「このまま続けていくと、うちの母もあなたと私が一緒になるんじゃないかって、期待してしまいます」
「ん、それは、わかってるよ」
「高岡さんの方も、このまま続けるのは……」
彼は、私の話を遮って自分の意見を言った。
「俺は、君と続けてもいいと思ってる。親も知りあい同士だし、お互いの性格も合ってるんじゃないかと思われる」
驚いて、彼の言葉を遮る言葉が出てこなかった。
「高岡さん?でも、このまま付き合ってるなんて言ってたら、本当に結婚させられますよ」
冗談で、そう言っただけだったのに。
彼は真面目に言った。
「それもいいかなと思ってる」
「ちょっと、待ってください」
「葉子ちゃん、お袋の言う通りいい子だし。人生の伴侶が君でも、何の不満もないよ」


