「私に?何を?」意味が分からないぞ。
彼女は、私たちを補佐する立場だ。
その補佐を、私たちがするのか?
「花梨、お前にキャパ以上のもんを渡さないようにするから、森沢さんを頼るなよ」
荻野君が冷たく言い放つ。
「花梨そんなことしませんって」
今、手伝ってって言ったじゃないの?
平田嬢は、荻野君の反応なんか見向きもせず、言いつくろった。
「業務が忙しくなったら、人増やすから他の人に頼るな。森沢さんは忙しくて、多分デスクにいられないから」
「ふ~ん。そうなんだ」
同じ女性なのにと、あきらかに不満顔。
花梨ちゃんは、どんなに荻野君にきつく言われようが、彼のことを相変わらず熱っぽく見つめてる。でも、彼女ばかりを責められない。
女の子が夢中になるのも無理はない。
さらっとした明るめの髪に、人懐っこい笑顔を向けられたら、それだけで彼のことを好きになってしまいそうになる。それほど整った甘いマスクをしてる。
その上、顔にも負けないほどの甘い声。
少し、男性にしては高い声だけど、私は、この声の方がたちが悪いと思う。
目をつぶって聞いていると、時々内容が分からなくなってしまう。
彼の声だけに集中してしまうのだ。


