高岡さんが、席に着いた途端に、彼の携帯電話が鳴り出した。
高岡さんは、「ごめん、ちょっとトラブってて」と私に謝った。
彼は席についた早々、部屋の外に出ていってしまった。
彼が席を離れている間に、呼吸を調え、少し落ち着くことが出来た。
これから、話すことを整理して、高岡さんに伝えた方がいい。
そう思うようになっていた。
「中座してごめん。もう、落ち着いたと思うから、こっちの話に集中するよ」
携帯をカバンの中に入れ、もう出ないからと笑って言った。
このお店は、高岡さんが見つけて来てくれた店だ。
お会いできませんかと誘ったのは、私の方だった。
彼の方が、お店に詳しいみたいだから、いいお店ご存知ですか?
と思い切って尋ねてみたら、
「いいよ。適当に見繕っておくから」と快く引き受けてくれた。
和食を中心に出してくれる店で、
普段、私のようなOLが選ぶような店と違って、敷居の高そうな、落ち着いた雰囲気だった。


