二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~


そして、もう一人黙って聞いていた男性がすっと立ち上がった。彼はうちの会社の名前が入った作業着を着ている。

「技術部から来ました。新井です。よろしくお願いします」
といって、すぐに席に着いてしまった。

「よろしくな、新井さん」
新井さんは、ちらっと荻野君の方を見てすぐに下を向いてしまった。

荻野君、これは手ごわそうだね。

次は、営業三課のもう一人の女性、というより女の子だ。

『女性一人じゃ、寂しいだろう』

原田部長が、冗談で言ってた。

まさかそんな理由で選ばれたんじゃないんだろうけど。

見た感じ、大変そうだ。いろんな意味で。

これは、一人で寂しくいた方がましかも。

立ち上がった彼女の様子を見て私は思った。


きれいな爪、完璧に仕上げられたお化粧。
緩やかに巻いた明るい色の髪をした女の子が、荻野君をうっとり見つめている。

「平田花梨でーっす。お願いします。えっと、ここでは課長以外の補佐もするようにって言われてるんですけど、森沢さんって何してるんですか?」

唐突に言われて驚いた。

「ん?」何してるって言われても。
さっき自己紹介したんだけど。

「仕事、大変だったら、森沢さんに手伝ってもらおうかと」
きれいに整えた、指先を見ながら言う。