「森沢、それマジか?」
隣で、急に大きな声がした。
肩をつかまれて、右隣の男性の顔を見た。
「ああ!」
驚いて、私も声をあげた。
おかげで、驚いた橋田君が私の腕を離した。
「新井さん?何でここにいるの?」
本当にびっくりした。
「何でって、俺は、君の同期だよ。大学院出てるから君より3つ上だけど」
新井さんは、すまして言う。
「ええっ……いつもの作業着じゃないから、わからなかった」
そういえば、帰るときの姿を知らない。
今は、濃いグレーのスーツを着てる。
新井さんが、腕を組んで言う。
「それより、結婚するならスケジュール教えとけよ。
せっかくだから、ハネムーンとか行くんだろ?オギと相談しないと。新婚さんに残業ばっかりさせられないからな」
「新婚になる前に、気を使ってやりなよ。忙しいとデートもできないじゃないの」
久恵が横やりを入れた。
「新井さん、ちょっと待って。そんな話まで進んでないです。余計な気を使わないでください」私は、慌てて止める。
「それで?断ったの?断ったんでしょ?」
橋田君が、迫ってくる。
私は、思わず言ってしまった。
言わなくてもいいことを。


