一瞬だけ、場が静まった。
その時、橋田君がポケットから携帯を取り出した。
画面を操作して、これだって言うと、そのまますっと私の目の前に差し出した。
「何、これ」
「俺、ちょうどこの日、知り合いの結婚式でこのホテルにいたんだよね」
「ん?」
着物を着た女性とスーツ姿の男性が並んで立っている写真だった。
着物の柄を見て、振り袖姿の女が、自分だと分かった。
この人、どうしてこんなところで、みんなの前で見せるんだろう。
「成人式じゃないから、こんなの着る理由ってお見合いか?」橋田君が言う。
なに?どうしたのって、その場が静かになった。
「一か月くらい前だよな。気になって。思わず写真撮っちゃった」
何の写真?
そういって、全員が橋田君の携帯の周りに集まってくる。
「ええっ、葉子お見合いしたの!!」
久恵が気付いてそう言いだした。
「橋田君、止めてよこんなところで」
私は、イラついてきつい言い方をした。
橋田君が、私の腕を捕まえて言う。
「どうなったんだ、まとまったのか?上手く行ったらいったで、はっきりしてくれ。覚悟はできてるぞ」


