「お疲れ様!先に飲んでるよ」
と久恵が軽くグラスをあげた。
「ん、私もビールにしようかな」
注文を聞きに来た、お兄さんにそう伝える。
「忙しいのに、悪かったわね。無理やり誘って」
「そんなことないの。新しい課が発足して間もないから、バタバタしてて」
「そうだよね。忙しいのは当たり前だよね。主任さんだもん」
たった4人の課で、主任も課長もないもんだ。
「三課って、営業のか?」
となりの男性が言う。
「そうよ。優秀な課長のいる課よ」久恵が突っ込む。
「何が優秀だよ」言われた彼は、久恵に突っ込まれて向きになる。
「だって、営業成績はぶっちぎりの首位。営業企画に行っても、いくつもうちの会社の柱になるような商品を作り上げて、順調に上りつめてる最年少課長でしょう?」
久恵じゃない方の、もう一人の女性が会話に参加してきた。
「誰だっけ?」
「荻野伸二。ちなみに、3つも下だよ」
「へえーっ、荻野君てあの荻野君?」
「そうよ。散々振り回されたけど。能力は凄かったな」
少しだけ自慢げに言う。
「そういえばさ、その荻野君、葉子の後にべったりくっ付いて、そのうち荻野君に、付き合ってくださいって言われるんじゃないの?って冗談で話してた子でしょう?」
「ずいぶん前の話よ。そんなの」


