二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

午後になっても、そのことが頭から離れなかった。

お昼を食べに、一人きりになったけど、気分は沈むばかり。

結局半分も残してしまった。


それからは、何も考えずに作業に没頭した。


「ちょっと、葉子さん、もしかして、まだ仕事してる?」

そう声をかけられて、顔をあげた。
さっき梨花ちゃんが、お先に失礼しますって帰って行ったのを思い出した。

「ええ、そうね。なるべく今のうちに……」

声をかけて来たのは、総務課の久恵だ。
彼女は、数少ない同期の女性で、数少ない社内での話し相手だ。


「ねえ、今日約束してるの忘れてないかな?」


「約束?えっと、ごめん。なんだっけ?」
慌ててカレンダーを見る。


「これだから……もう。前払いで、お金もらってるんだけどな」


「あっ、同期会だ」
すっかり忘れてた。

「あっ、じゃないよ。忘れてた?出かける前に声かけてよかった」


「ごめん。えっと……もう少しで終わるから」
私は、慌て作業を終わらせる。

「いいよ。先に行ってる。場所と時間はメール見てね。みんな森沢さんと話したいみたいだから、絶対来てね」


「ん、分かった」


「お先に失礼します。課長」

「ああ、お疲れ様」
フロアを出るとき、課長の背中越しに声をかけた。

こうしていれば、普通に見える。

大丈夫。

そう言い聞かせる。



会社の近くの店で、店の作りは和風だ。
障子戸とふすまで仕切られた空間に、座る場所は掘りごたつのように、足を延ばして座れるようになっている。

先に来ていた5人は、ビールを飲み料理をつまんでいる。

「お待たせ」

「おお、やっと来た」
すでに、何度か同期会をしているから、会話も弾んでいる。


同期会と言っても、本社に勤務している私の同期の女子は、たった3人。

ほとんどの女子社員がすでに退職してる。