「…」
霧島くんの機転に、助けられた。
お礼…言った方がいいよね。
言うべきだよね。
"安藤先生は、カメを見に来ただけです"
でも、直接言える自信がない。
LINEならーーー見てくれるかな。
そんな事を、もう何分も前から考えているわたし。
でも…怖いよ。
"さよなら…"
あの日閉じ込めたわたしの想いが、どうにかなってしまいそうで。
「…っ」
それなのに、どうしても思い出してしまう。
"オレさ、マジで、好きだから………"
「霧島くん…」
何度も会いに来てくれて…ここで、わたしは霧島くんと初めてのキスをしたーーー。
「はぁ…っ」
いつまでも泣いてる場合じゃない、そろそろ教室に戻らなきゃ。
でも、言うことを聞いてくれない身体は重く、涙は止まらなかった。
ハンカチで目を覆うと、涙が吸い込まれていくのがわかる。
あの日以降、霧島くんとのことを何度も忘れようとした。
それなのに、忘れるどころか思い返してばかりだった。
そして今日、顔を見ただけなのに…締め付けられる想いに溢れて止まらないのは涙。
霧島くんーーー。
"オレ…、安藤先生のこと、好きなんですけど"
どうすれば、わたしの中から居なくなってくれるのかな…。
「先生…?」
ふいに呼ばれて声のする方を見た瞬間、わたしは波打つ身体をぎゅっと抱いた。
今の時間は誰も来ないはずだから、こもった臭いを換気するためにドアを半分開けていて…人が入って来たことに気が付かなかった。
何で……。
「全然戻って来ないから、仮病つかって探しにきました」
「ーーー…」
何で、佐倉くんが…。
「何かあったんですか…?」
「何でもない」と答えたかったけど、わたしはハンカチを両目に押し当てて首を振ることしか出来なかった。
「じゃあ何で…そんなに泣いてるんですか」
「………」
「…」
理由なんか、言える訳もなかった。
そんな事よりも佐倉くんがここに居る事に、わたしの中の嫌な予感が少しずつ大きくなっていった。
「先生、」
静かな室内に佐倉くんの声が響き、どきりとする。
「俺じゃ…だめですか?」
思わず顔を上げると、佐倉くんはわたしのすぐ目の前まで来ていた。
「え、何言って…」
離れなきゃと思い立ち上がるけど、そこから身体がなかなか言うことを聞いてくれない。
「先生ーーー」
「佐く……!」
何が起こったのかーーー理解できたのはおそらく数秒後、わたしの言葉を遮ったのは、佐倉くんの唇だったという事を。
霧島くんの機転に、助けられた。
お礼…言った方がいいよね。
言うべきだよね。
"安藤先生は、カメを見に来ただけです"
でも、直接言える自信がない。
LINEならーーー見てくれるかな。
そんな事を、もう何分も前から考えているわたし。
でも…怖いよ。
"さよなら…"
あの日閉じ込めたわたしの想いが、どうにかなってしまいそうで。
「…っ」
それなのに、どうしても思い出してしまう。
"オレさ、マジで、好きだから………"
「霧島くん…」
何度も会いに来てくれて…ここで、わたしは霧島くんと初めてのキスをしたーーー。
「はぁ…っ」
いつまでも泣いてる場合じゃない、そろそろ教室に戻らなきゃ。
でも、言うことを聞いてくれない身体は重く、涙は止まらなかった。
ハンカチで目を覆うと、涙が吸い込まれていくのがわかる。
あの日以降、霧島くんとのことを何度も忘れようとした。
それなのに、忘れるどころか思い返してばかりだった。
そして今日、顔を見ただけなのに…締め付けられる想いに溢れて止まらないのは涙。
霧島くんーーー。
"オレ…、安藤先生のこと、好きなんですけど"
どうすれば、わたしの中から居なくなってくれるのかな…。
「先生…?」
ふいに呼ばれて声のする方を見た瞬間、わたしは波打つ身体をぎゅっと抱いた。
今の時間は誰も来ないはずだから、こもった臭いを換気するためにドアを半分開けていて…人が入って来たことに気が付かなかった。
何で……。
「全然戻って来ないから、仮病つかって探しにきました」
「ーーー…」
何で、佐倉くんが…。
「何かあったんですか…?」
「何でもない」と答えたかったけど、わたしはハンカチを両目に押し当てて首を振ることしか出来なかった。
「じゃあ何で…そんなに泣いてるんですか」
「………」
「…」
理由なんか、言える訳もなかった。
そんな事よりも佐倉くんがここに居る事に、わたしの中の嫌な予感が少しずつ大きくなっていった。
「先生、」
静かな室内に佐倉くんの声が響き、どきりとする。
「俺じゃ…だめですか?」
思わず顔を上げると、佐倉くんはわたしのすぐ目の前まで来ていた。
「え、何言って…」
離れなきゃと思い立ち上がるけど、そこから身体がなかなか言うことを聞いてくれない。
「先生ーーー」
「佐く……!」
何が起こったのかーーー理解できたのはおそらく数秒後、わたしの言葉を遮ったのは、佐倉くんの唇だったという事を。



