「かして?」
わたしの手からするりと離れた日傘が霧島くんによって開かれると、自然と縮まる距離に、また身体が熱くなっていく。
私服姿の霧島くんに、ただでさえドキドキしているというのに。
「ーー…」
駅のコンビニから歩くこと数分、景色は街並みから住宅街へと変わっていた。
「着いたよ」
霧島くんの言葉に、どくんと胸が鳴る。
日傘を閉じてわたしの先を行き、玄関の鍵を開けてから振り向いた霧島くんの、少し緊張しているとも取れるその笑顔がたまらなく愛おしくて、
「うん」
自然とわたしも笑顔になっていた。
それは、志朗さんにも感じたことのない気持ちだった。
「おじゃま…します」
それでも一歩家の中へ入った途端、緊張が全身を走る。
「俺たちしかいないから大丈夫だって。アイスしまってくるねー」
さっきの緊張したような霧島くんはどこへやら、自宅とだけあってもうリラックスモードだ。
「…」
いつでも見透かされてばかりだな、わたしって。
2階の霧島くんの部屋は程よく片付いていて、机の上には問題集や参考書が置かれていた。
「汚いけどテキトーに座って?」
「…あ、うん」
霧島くんは、さっきコンビニで買ったジュースのペットボトルを小さなテーブルに置くと、その前に座った。
テレビの正面にあたるそこは、きっと霧島くんの定位置なんだろうな。
「…」
今更だけど、わたし…本当に霧島くんの部屋に居るんだ。
「どうしたの?」
「えっ、あの…、な、なんでもないけど、」
「けど?」
突っ立っているわたしを上目遣いで見る霧島くんに、もうどうにかなってしまいそうだった。
「き、緊張…しちゃって。ごめん」
「え、緊張してんの⁈それオレのこと好きすぎるって話⁈笑」
あははと笑われて、恥ずかしさ全開になるわたし。
「もーっ!そういう事じゃないし!」
「わはは!」
茶化されたおかげで、少しだけ…解れたのは言うまでもなかった。
そして笑いながら部屋を見渡していたら、見つけてしまったんだ。
「あ!絵のモデルさんだよね!」
「え?あ、うん。可愛いでしょ」
水槽のようなケースの中で目を閉じてじっとしているモデルさんーーーーカメの目の前で、しゃがみ込むわたし。
「うん、可愛いね。寝てるの?初めまして、カメさん」
わたしは、霧島くんの描く絵を思い出していた。
わたしの手からするりと離れた日傘が霧島くんによって開かれると、自然と縮まる距離に、また身体が熱くなっていく。
私服姿の霧島くんに、ただでさえドキドキしているというのに。
「ーー…」
駅のコンビニから歩くこと数分、景色は街並みから住宅街へと変わっていた。
「着いたよ」
霧島くんの言葉に、どくんと胸が鳴る。
日傘を閉じてわたしの先を行き、玄関の鍵を開けてから振り向いた霧島くんの、少し緊張しているとも取れるその笑顔がたまらなく愛おしくて、
「うん」
自然とわたしも笑顔になっていた。
それは、志朗さんにも感じたことのない気持ちだった。
「おじゃま…します」
それでも一歩家の中へ入った途端、緊張が全身を走る。
「俺たちしかいないから大丈夫だって。アイスしまってくるねー」
さっきの緊張したような霧島くんはどこへやら、自宅とだけあってもうリラックスモードだ。
「…」
いつでも見透かされてばかりだな、わたしって。
2階の霧島くんの部屋は程よく片付いていて、机の上には問題集や参考書が置かれていた。
「汚いけどテキトーに座って?」
「…あ、うん」
霧島くんは、さっきコンビニで買ったジュースのペットボトルを小さなテーブルに置くと、その前に座った。
テレビの正面にあたるそこは、きっと霧島くんの定位置なんだろうな。
「…」
今更だけど、わたし…本当に霧島くんの部屋に居るんだ。
「どうしたの?」
「えっ、あの…、な、なんでもないけど、」
「けど?」
突っ立っているわたしを上目遣いで見る霧島くんに、もうどうにかなってしまいそうだった。
「き、緊張…しちゃって。ごめん」
「え、緊張してんの⁈それオレのこと好きすぎるって話⁈笑」
あははと笑われて、恥ずかしさ全開になるわたし。
「もーっ!そういう事じゃないし!」
「わはは!」
茶化されたおかげで、少しだけ…解れたのは言うまでもなかった。
そして笑いながら部屋を見渡していたら、見つけてしまったんだ。
「あ!絵のモデルさんだよね!」
「え?あ、うん。可愛いでしょ」
水槽のようなケースの中で目を閉じてじっとしているモデルさんーーーーカメの目の前で、しゃがみ込むわたし。
「うん、可愛いね。寝てるの?初めまして、カメさん」
わたしは、霧島くんの描く絵を思い出していた。



