「あれー、何で霧島くん?」
「そーゆう2人も、何でこんなとこにいるんだよ」
美雪ちゃんの言葉をさらりと交わす霧島くん。
「美雪たちは、リカちゃん先生とお喋りしに来てるだけ。ちょっと臭いけどね、ここ」
「臭いとかこんなとことか、2人ともリカちゃん先生に失礼だよ」
恵ちゃんの言葉に、わたしはうんうんと頷いた。

「だってホントの事じゃん。てかさ、霧島くんがここに来たってことは、やっぱり噂通りってことぉ?」
「……」
噂…わたしと、霧島くんの。
「噂?あぁ、アレね。オレ実は絵の勉強しててさ、リカちゃん先生に見てもらってるんだ。今日もそのスケッチブックを受け取りに来ただけだから」
「そ、そうなの!これねっ、はい、霧島くん!」
わたしは机の上に置いてあったスケッチブックを慌てて手に取ると、そのまま目の前にいる霧島くんに差し出した。

「あることないこと勝手に噂されて困ってんだー。ねぇ先生?」
「うんっ…!本当に困っちゃうよね〜…」
いきなり話を振ってくる霧島くんに、今まさに困ってますけど…。
わたしも、霧島くんみたいに上手く交わせるようになりたい。

「えーっ、霧島くんが絵なんて意外!美雪、見てみたいなぁ」
「あたしも興味あるかも」
美雪ちゃんと恵ちゃん、2人の興味が霧島くんの絵に向いて、わたしはほっと胸を撫で下ろした。
「それはだめ」
「………」
あれ…やばい……なんか、嬉しいかも。
わたし以外には見せたくないーーー勝手な解釈をして、顔がニヤけるのを必死でこらえた。
「なんでー?見せてくれたっていいじゃん、減るもんじゃないんだし」
美雪ちゃんは、ぷーっと膨れていた。
「でもさ、受験生なのに絵の勉強なんて超余裕じゃん。霧島くんって就職なの?」
恵ちゃんの言葉に、はっとするわたし。
わたし…霧島くんの進路のこと、何にも知らない。