わたしを避けていた訳じゃ……ないのかな。
すぐに、嬉しい気持ちに支配されていることに気付き、罪悪感がその芽を出す。
わたしは《じゃあ、また明日ね》とだけ返して、ケータイの画面を伏せた。
次の日、各部活動の時間が始まって少しすると、霧島くんはスケッチブックを手に現れた。
「これ持ってたら自然でしょ?」
そう言いながら、スケッチブックをひらひらとさせる。
「そう…だね」
わたしは静かに筆を置くと、霧島くんを見た。
ワイシャツのボタンをいくつか外し袖をまくる、そのさりげなく着崩した姿にドキっとしてしまうわたし自身を、認めざるを得なかった。
「先生も、絵描くんだね」
「あ、うん。今はたまにだけど」
「へぇ……」
霧島くんがこちらに近づいてきて、まじまじとわたしの絵を見始めた。
それはまるで、わたしの全てを見られているようで……。
しっかりしろ、梨花子。
霧島くんが見ているのはわたしじゃなくて、わたしが描いた絵。
わたしは霧島くんに気付かれないように、そっと両手で自分自身を包んだ。
わずかに上昇した体温に、心の中で下がれと言いながら。
それなのに、
「先生の絵、優しいね。オレ先生の絵も好きだな」
「え……」
霧島くんがこんな事を言うもんだから、わたしの身体は火照る一方だった。
「てか先生の話したいことって、なに?わざわざ呼び出すってことは、みんなに聞かれたくない話?」
「……」
昨日の事を霧島くんに話していいのか、躊躇うわたしがいた。
「…安藤先生?」
すぐ横で、わたしを呼ぶ霧島くんの声がする。
「た……田宮、詩織ちゃん」
「え…何で先生が詩織のこと知ってんの?」
思い切って名前を出した途端に、霧島くんは真顔になった。
「…」
"詩織"って、呼ぶのね……。
「霧島くんから別れようって言われた事を、怒ってたよ」
「だから何で先生が…」
霧島くんは、少し焦っているようにも見えた。
すぐに、嬉しい気持ちに支配されていることに気付き、罪悪感がその芽を出す。
わたしは《じゃあ、また明日ね》とだけ返して、ケータイの画面を伏せた。
次の日、各部活動の時間が始まって少しすると、霧島くんはスケッチブックを手に現れた。
「これ持ってたら自然でしょ?」
そう言いながら、スケッチブックをひらひらとさせる。
「そう…だね」
わたしは静かに筆を置くと、霧島くんを見た。
ワイシャツのボタンをいくつか外し袖をまくる、そのさりげなく着崩した姿にドキっとしてしまうわたし自身を、認めざるを得なかった。
「先生も、絵描くんだね」
「あ、うん。今はたまにだけど」
「へぇ……」
霧島くんがこちらに近づいてきて、まじまじとわたしの絵を見始めた。
それはまるで、わたしの全てを見られているようで……。
しっかりしろ、梨花子。
霧島くんが見ているのはわたしじゃなくて、わたしが描いた絵。
わたしは霧島くんに気付かれないように、そっと両手で自分自身を包んだ。
わずかに上昇した体温に、心の中で下がれと言いながら。
それなのに、
「先生の絵、優しいね。オレ先生の絵も好きだな」
「え……」
霧島くんがこんな事を言うもんだから、わたしの身体は火照る一方だった。
「てか先生の話したいことって、なに?わざわざ呼び出すってことは、みんなに聞かれたくない話?」
「……」
昨日の事を霧島くんに話していいのか、躊躇うわたしがいた。
「…安藤先生?」
すぐ横で、わたしを呼ぶ霧島くんの声がする。
「た……田宮、詩織ちゃん」
「え…何で先生が詩織のこと知ってんの?」
思い切って名前を出した途端に、霧島くんは真顔になった。
「…」
"詩織"って、呼ぶのね……。
「霧島くんから別れようって言われた事を、怒ってたよ」
「だから何で先生が…」
霧島くんは、少し焦っているようにも見えた。



