美雪ちゃんが、恵ちゃんが作ったチョコレートの包みを開けて、ぱくんと口へ放り込む。
「うんうん、この素朴な味がいいわね、手作り感満載!」
「なによ、意外や素朴で…悪かったわね」
恵ちゃんが、ボソボソと恥ずかしそうにしていた。
「でもオレ、手作りとか初めてかもー。フツーにウマそうじゃん」
「そぉなんだ、藤井くんモテそうなのにね」
藤井くんの言葉に、美雪ちゃんが突っ込む。
「ま、それなりに?でも基本もらわねーからな、オレは」
「自分でモテるとか、やなヤツー(笑)!」
「あはは!」
「間違いない!」
美雪ちゃんの一言に、みんなから笑いが起こる。
そんな中、わたしはひとつの異変に気がついた。
恵ちゃんの顔がどんどん赤くなって、それに加えて落ち着きがないのだ。
「あ、オレ行かなきゃ」
もしかして……と想像を膨らませていると、霧島くんの声がわたしを現実へと引き戻す。
「響はカノジョにチョコもらいに行くんだろ?いいよなー彼女持ちは」
「別に…冷やかすなよ」
甲斐くんの冷やかしを、さらりと交わす霧島くんだった。

「さてと、わたしもそろそろ職員室に戻らなきゃ」
霧島くんたち3人トリオが帰り、わたしも席を立った。
「リカちゃん先生も帰っちゃうの〜?」
「あのね美雪ちゃん、わたしはまだ仕事があるの」
「…ゔぅ」
「あ、そうだ、恵ちゃん」
「ん?」
ガックリと肩を落とす美雪ちゃんをスルーして、
「恵ちゃんダイエットしてるって言ってたから、小さめのチョコにしたの。恵ちゃんって…その…藤井くん、だったりする?」
わたしは恵ちゃんに耳打ちをした。
「な、な、な、なんで、え⁈あ、えと…わッ!」
ガタガタと音を立てて椅子が傾き、恵ちゃんが椅子から落ちた。
「なになに、なんの話ー?」
興味津々の美雪ちゃんと、明らかにキョドっている恵ちゃん。
どうやら、恵ちゃんの好きな人が藤井くんというわたしの想像は正しかったみたい。
「恵ちゃん今ダイエットしてるから、それで小さいチョコにしたって話だよ。じゃあね、また明日」
わたしはそそくさと教室を後にした。