「リカちゃん先生お疲れ様ぁ〜!」
2年3組の教室に入ると、美雪ちゃんが元気に迎えてくれた。
「ありがとう。まだやることあるから今日はあんまり時間ないけど」
わたしは美雪ちゃんの向かいに座ると、紙袋をゴソゴソとあさって、2人にチョコレートを手渡した。
「わぁ!ありがとう!かわいい箱だね、ねっ恵都」
「うん、ありがとうリカちゃん先生!でもなんであたしの箱の方が小さいの?」
恵ちゃんは、美雪ちゃんのチョコレートの箱と比べて、自分の方が小さいことに気付いていた。
「ホントだぁ。やっぱアレだよ、愛情の差!」
「あはは、違うよ。それはね…、」
わたしは笑いながら、2人の会話に割って入った。

「愛情っていうなら、オレらには特大チョコじゃね?」
「言えてるー」
ちょうど通りかかったのだろう男子生徒たちが更に割り込んできて、廊下から顔を出してこちらを見ていた。
それは、甲斐くんと藤井くんと、
「オレのもある?安藤先生」
霧島くんだったーーー。
「あ、あるけど?特大チョコじゃないけどね。余り物でよければどうぞ(笑)」
わたしは3人に、ポンポンとチョコレートを手渡していった。
「…」
霧島くんとわずかに触れた指先が、だんだんと熱を帯びてくる。
「余り物かよー。じゃあお返ししなくていいじゃん、ラッキーだなオレらって」
「確かに。もらってあげた感じ(笑)?」
甲斐くんのその発想に藤井くんが相づちを打つけど、わたしの頭にはほとんど入ってこなかった。
指先が、じんわりとあたたかくなって、わたしの思考能力が低下する。
ちらりと見た霧島くんは、笑顔でみんなと話していた。
恵ちゃんも余ったチョコレートを3人にあげていて、霧島くんもそれを受け取っていた。
それを見て、彼女からチョコレートを受け取る霧島くんの姿を想像して…すぐに掻き消すわたし。
「…」
なにやってんのよ……。
「ねぇねぇ、恵都のって手作りだよね⁈意外ーっ」