「ここで待ってたら、来ると思って」
「…そ、そう」
間違いでも何でもなく、トクンと鳴るわたし。
さっきまで頭の中にいた霧島くんが目の前にいるんだもん、キョドってしまうよ。
それでも出来るだけ平静を保ちながら、美術室の準備室のドアを開けると、冬でもモワッとした油絵の具独特の匂いが立ちこめていた。
「安藤先生、何で美術室なんかに来たの?」
「え…。明日から部活が始まるから、準備とか色々……」
別にわたしがここに来るのはおかしな事じゃないでしょ、むしろ霧島くんがここにいる事の方が不自然だよ。
「ふーん。オレのスケッチブック持って?」
「あ、これは…まだ、見てないから」
誰にも邪魔されずにひとりでゆっくり見たかったなんて、そんな事は恥ずかしすぎて口が裂けても言えない。
「あ!」
「え?」
「霧島くん、お昼食べてないんじゃない?」
「あぁ、うん」
わたしは、右手でゴソゴソとポケットをあさった。
「良かったら、食べて?」
「え、いいの?サンキュー先生」
霧島くんは、わたしが差し出したお饅頭を、嬉しそうに受け取ってくれた。
「…」
触れそうで触れなかったわたしの指先が、名残惜しそうに戻ってきた…。
「美味いじゃんコレ」
こういう時変に遠慮したりせず、霧島くんみたいにバクバク食べてくれた方が、気持ちがいい。
あ、美雪ちゃんは3つも食べてたな…(笑)。
「でしょ、わたしの地元のお土産なの」
「へぇ〜。でさ、オレの絵の話なんだけど…」
「…。」
わたしの話を聞いているのかいないのか、霧島くんはさっさと話をすり替えていた。
「あれって沖縄でしょ?わたしに送ってくれた……」
ハッとしたわたしは、この先の言葉に詰まった。
だってわたしはさっき、スケッチブックの中身をまだ見ていないと言ったのだから。
「そう。普段風景はあんまり描かないんだけど、あの海はすごく気に入ってて」
「そ、そうなのね」
「いいと思ったから、先生にも送ったんだ」
霧島くんは、お饅頭の包み紙をゴミ箱に捨てた。
「…そ、そう」
間違いでも何でもなく、トクンと鳴るわたし。
さっきまで頭の中にいた霧島くんが目の前にいるんだもん、キョドってしまうよ。
それでも出来るだけ平静を保ちながら、美術室の準備室のドアを開けると、冬でもモワッとした油絵の具独特の匂いが立ちこめていた。
「安藤先生、何で美術室なんかに来たの?」
「え…。明日から部活が始まるから、準備とか色々……」
別にわたしがここに来るのはおかしな事じゃないでしょ、むしろ霧島くんがここにいる事の方が不自然だよ。
「ふーん。オレのスケッチブック持って?」
「あ、これは…まだ、見てないから」
誰にも邪魔されずにひとりでゆっくり見たかったなんて、そんな事は恥ずかしすぎて口が裂けても言えない。
「あ!」
「え?」
「霧島くん、お昼食べてないんじゃない?」
「あぁ、うん」
わたしは、右手でゴソゴソとポケットをあさった。
「良かったら、食べて?」
「え、いいの?サンキュー先生」
霧島くんは、わたしが差し出したお饅頭を、嬉しそうに受け取ってくれた。
「…」
触れそうで触れなかったわたしの指先が、名残惜しそうに戻ってきた…。
「美味いじゃんコレ」
こういう時変に遠慮したりせず、霧島くんみたいにバクバク食べてくれた方が、気持ちがいい。
あ、美雪ちゃんは3つも食べてたな…(笑)。
「でしょ、わたしの地元のお土産なの」
「へぇ〜。でさ、オレの絵の話なんだけど…」
「…。」
わたしの話を聞いているのかいないのか、霧島くんはさっさと話をすり替えていた。
「あれって沖縄でしょ?わたしに送ってくれた……」
ハッとしたわたしは、この先の言葉に詰まった。
だってわたしはさっき、スケッチブックの中身をまだ見ていないと言ったのだから。
「そう。普段風景はあんまり描かないんだけど、あの海はすごく気に入ってて」
「そ、そうなのね」
「いいと思ったから、先生にも送ったんだ」
霧島くんは、お饅頭の包み紙をゴミ箱に捨てた。



