この恋を、忘れるしかなかった。

「それにしても図々しすぎるわね、林先生って」
ケラケラと笑いながら話してくる川本先生…もう少し声のボリューム下げた方がいいと思うんですけどー。
「ま、まぁでも、去年修学旅行のお土産もらいましたから…。てか川本先生、林先生に声聞こえてませんかね…」
「…あぁ、確かに私ももらいました。でもあれって、バレンタインまでのポイント稼ぎって、職員室中のウワサでしたよ(笑)」
今度はコソコソと、耳打ちしてきた川本先生だった。
「…」
林先生……悪い人ではないのだろうけど、やっぱり苦手なタイプだわ。
そんなこんなで始まった今日は、始業式のためお昼前に終わった。

「あ、やっぱりいた」
わたしは2-3の教室を覗き、美雪ちゃんと恵ちゃんがいることを確認してから中に入っていった。
「あ、リカちゃん先生!」
「美雪たち今日は約束してないよー?」
美雪ちゃんはキョトンとした顔でわたしを見ていた。
放課後に教室で集まる時はLINEでやりとりをして決めるのだけど、今日はキョトンとするのも無理もない。
「うん、わかってる。今日はわたしが用事があって来たの」
わたしが勝手に来たのだから。
始業式の今日は式と課題の回収くらいで、あっという間に終わったから、まだお昼までには時間がある---美雪ちゃんたちはすぐには帰らないと考えて、来てみて正解だった。
「用事?」
恵ちゃんが首をかしげて、頭の上に?マークをつくる。
「じゃーん、お土産!」
「わぁ!いいの?リカちゃん先生大好きーっ!」
「2人とも修学旅行のお土産くれたから、そのお返し」
「やったー!」
わたしが袋から出したお土産を見て子供みたいにはしゃぐ美雪ちゃんと、
「お饅頭じゃん…」
少しテンションが下がった恵ちゃん。
「あれー?恵都ってお饅頭ダメだった?じゃあ美雪がもらってあげるよ!」