「それにしても、霧島くんが藤井くんや甲斐くんと仲がいいなんて意外だったわ」
わたしは2日前の恵ちゃんの言葉を思い出していた。
「そぉ?自分で言うのもなんだけど、オレ普段はあんなカンジだよ(笑)」
「あははー、意外な本性ってヤツね」
「本性とかやめてよ。せめて素とか…他にも言い方あるじゃん」
「一緒でしょ(笑)」
「一緒じゃねーし」
声をあげて2人で笑い合うーーーそれは、息をする音さえも聞こえてしまいそうな程静かな静かな空間に、その空間の中にいるわたしに、大きく響いていた。
「…」
わたしは、愛情あふれる…こんなにも優しい絵を描く霧島くんのことを、もっと知りたいと思った。
わたしもこんな絵が描けるようになりたいと、ずっと憧れていたそれを目の前に、まだ高校生の霧島くんに少し嫉妬しているのかもしれない。
悔しいけど、わたしはこんな風には描けないからーーー。
「あ」
ふいに霧島くんが声をあげた。
「先生、オレそろそろ帰らなきゃ」
「え?あ、ホントだ、もういい時間だね」
時計を見上げている霧島くんにつられて、わたしも同じように時計を見上げた。
時計の針は、いつの間にか19時をまわっていた。
「気をつけてね」
「うん。さよーなら先生」
律儀にあいさつして帰っていった霧島くんを見送って、再びわたし1人になった教室は、途端に寂しさが漂ってきた。
あ……そういえばケータイ、さっき震えてた…志朗さんかも。
わたしが志朗さんに遅くなると送ったメールの返信がきているかもと思い、確認を急ぐ。
《わかった。じゃあ俺は適当にメシ食ってから帰るから。梨花子は気にしないで仕事続けてて》
「…良かった」
ホッとして、思わずつぶやく。
でも今日は、もう帰ろう。
あんなに素敵な絵を見たわたしの身体の中は、何だかほわほわとしていて、仕事気分とは程遠いものになってしまったから。
月曜日の朝、少しだけ早めに来て続きをやればいい。
わたしは2日前の恵ちゃんの言葉を思い出していた。
「そぉ?自分で言うのもなんだけど、オレ普段はあんなカンジだよ(笑)」
「あははー、意外な本性ってヤツね」
「本性とかやめてよ。せめて素とか…他にも言い方あるじゃん」
「一緒でしょ(笑)」
「一緒じゃねーし」
声をあげて2人で笑い合うーーーそれは、息をする音さえも聞こえてしまいそうな程静かな静かな空間に、その空間の中にいるわたしに、大きく響いていた。
「…」
わたしは、愛情あふれる…こんなにも優しい絵を描く霧島くんのことを、もっと知りたいと思った。
わたしもこんな絵が描けるようになりたいと、ずっと憧れていたそれを目の前に、まだ高校生の霧島くんに少し嫉妬しているのかもしれない。
悔しいけど、わたしはこんな風には描けないからーーー。
「あ」
ふいに霧島くんが声をあげた。
「先生、オレそろそろ帰らなきゃ」
「え?あ、ホントだ、もういい時間だね」
時計を見上げている霧島くんにつられて、わたしも同じように時計を見上げた。
時計の針は、いつの間にか19時をまわっていた。
「気をつけてね」
「うん。さよーなら先生」
律儀にあいさつして帰っていった霧島くんを見送って、再びわたし1人になった教室は、途端に寂しさが漂ってきた。
あ……そういえばケータイ、さっき震えてた…志朗さんかも。
わたしが志朗さんに遅くなると送ったメールの返信がきているかもと思い、確認を急ぐ。
《わかった。じゃあ俺は適当にメシ食ってから帰るから。梨花子は気にしないで仕事続けてて》
「…良かった」
ホッとして、思わずつぶやく。
でも今日は、もう帰ろう。
あんなに素敵な絵を見たわたしの身体の中は、何だかほわほわとしていて、仕事気分とは程遠いものになってしまったから。
月曜日の朝、少しだけ早めに来て続きをやればいい。



