「話は終わりましたか?」

苦笑混じりに入ってくる倖と、その後から感情の読み取り辛い表情で続く修人。

終わった、と端的に返す私にはやはり愛想なんてなく、それでも彼等が気にするとも思わない。それもまた、一種の信用だと言ってしまえることに、私は気づかずに一人欠けていることに気付いた。

「そういえばレオは?」

ふとした疑問だが、どうにも彼が保健室へと入ってくる様子はなく、試しに訊いてみる。思い返してみれば彼は廊下の時はいたというのに、保健室に来た時は既に姿はなかった。

腕に絡む蒼を見下げれば、彼はへらりと目を細める。

「おつかいだよ」

言及されると困るようなことなのか、その目は笑っていなかった。しかし、さして気にすることもなく私はそれ以上訊くことはしなかった。

「それじゃあ私ちょっと理事長のところに行くから。蒼、離れて」

立ち上がろうと蒼を引き剥がそうとするが、彼はきょとんとした顔で見上げてくるばかりだ。何気に力が強く、立ち上がれないのだけれど。