「結界が破れた。力が増してきているな」



急いで本殿へ戻ると周囲を囲んでいた札は全てドロドロに溶けてしまっていて。

床には形代が落ちていた。



「ナツ君‥‥嘘でしょ‥?」

「ナツが桔梗に取り込まれた。だが取り込んでいないのと同じだ」



落ちている形代がナツ君を生かしていたものだから。

つまり桔梗は、奏の力を取り込んだだけと言う事になる。


先ほどまで鈴虫まで鳴いて綺麗な星空だった夜は、今は土砂降りの暗い夜になってしまっていた。



「俺の力を取り込んでさらに力を増したか」



そっか。

奏の力を取り込んだという事はそれはもう桔梗の力。

小さな力でもかなり強力だから、桔梗にとっては美味しい力だ。



「ここまで来るともう消すしか方法は無さそうだな」



奏は落ち着いた様子で、本殿から出て行ってしまう。

強い雨が体を濡らしていく。