何か逃げてきちゃったけど、ナツくん大丈夫かな。 廊下を歩きながら私はいろいろ考えていた。 「あ、この和室」 たまたま通った和室に私は足を止めた。 なぜだか、かなり広い和室なのに真ん中にお琴が常に置かれていた。 私、ここで何かをしていた気がする。 小さい頃からずっと、この琴だけが置かれた和室を不思議に思いながらも何気なく過ごしてきた。 琴にそっと近づいてみる。 弾き方など分からない。 教わった事なんて一度もないのに、私の指は、 まるで知っているかのように弦を弾いていった。