「んで、どうしたんだよ?また、暗い顔してんぞ。」

「うん……」

「お前なぁ…、ったく、しょうがねぇ奴だな。」

陽向は、ハァっとため息をつくと、椅子を持ってきて俺の前に座り直して、真面目な顔をした。

「楓摩。よく聞け。」

「うん。」

「お前が、そんな暗そうな顔してどうすんだ?朱鳥ちゃんは、どんな気持ちになる?医者のお前がそんな顔してちゃ、不安になるに決まってんだろ?」

「……でも、俺。どんな顔をしていいかわからない。」

「楓摩は、深く考えすぎだ。朱鳥ちゃんの事が心配なのは、よくわかる。けど、不安な表情を見せたらダメ。ちゃんと、彼氏として彼女をサポートしてあげな。楓摩は、病気になった事がないから、わかんないかもしれないけど、不安そうな顔されるよりは、ファイト!って、励ましてくれる方がいいだろ?」

「うん……」

「ただ、それだけ。お前は、彼氏として朱鳥ちゃんを励ます。一緒に泣いて、一緒に笑うって約束したんだろ?だったら、ちゃんと守んなきゃ。朱鳥ちゃんには、お前以外にいないんだよ。だから、もっと自信もて!それでも、笑顔になれないってゆーなら、こーしてやる!」

そういうと、陽向は俺のほっぺをグーっと引っ張ってきた。

「ちょっ、痛っ!痛いって!やめろっ!陽向!!」

「うわ~変な顔っ!面白れ~(笑)」

「バカっ!やめろ!痛いってば!」

俺が叫ぶと、ヒョイっと手を離した陽向。

「っ!お前な~!いい加減にしろよ!バカ!こうしてやる!」

そういって、俺は陽向を全力でくすぐった。

「お、おまっ!や、やめろぉっ!お、俺こちょばし弱いんだよっ!ハハッ!やめろぉ!」

「ハハハッ!」

面白かったけど、少し可哀想だったから、俺は陽向をくすぐるのをやめた。

「お前……やっと笑ったな!楓摩のばーか!ばーかばーかばーーーか!こんな事しないと笑えないのかよ(笑)」

「バカはどっちだよ!?他に笑わせる方法なかったのかよ!?バーカ」

「……ふふっ!」

「……ハハッ!」

しばらく顔を見つめ合わせ、二人して笑った。

陽向は、人を笑顔にさせる天才だな。

「お前は、笑顔の方が似合うんだから!朱鳥ちゃんの前でも、そのくらい笑えよ!」

そういうと、陽向は、俺の背中をバシバシと叩いた。

「おう!ありがとう。って、それにしても、お前は手加減しろよな!?」

「ハハッ!ごめん(笑)」

「ま、いっか。さんきゅー!俺、もう1回朱鳥の所行ってくる!」