陽向を連れてやってきたのは屋上。

夜ということもあって、そのには誰もいなかった。

「んで、どーしたんだよ。」

俺たちはベンチに腰を掛けて話し始めた。

「ちょっと、相談なんだけどさ。朱鳥の事で……」

「おう」

「朱鳥、大人が怖いって言ってたんだ。」

「えっ……!?」

「驚くよね……でも、俺だけは大丈夫って言ってくれたんだ。」

陽向は黙って俺の話を聞いてくれた。

「明日の検査、朱鳥泣いちゃうんじゃないかな……って思ってね。朱鳥の家の事情は結構複雑みたいなんだ。それで、大人が怖くなったって……。」

「複雑って、どんな?」

「うん。あんまり、人に聞かれたくないけど陽向だから言うね?朱鳥は両親に捨てられたって……言ってた。」

「……っ!!」

「それに、その後に預けられた親戚の所でも、ロクにご飯も貰えずに暴力の日々だったって……」

「…………。」

陽向は完全に、言葉を失っていた。

「明日する骨髄検査、痛いでしょ?だから、トラウマを思い出しちゃうんじゃないかなって思ってさ……でも、大人が怖いなら助っ人も呼べないなって。」

「そっか。そんな事情があったんだな。だったら、俺もむやみに近ずけないな……」

「でも、手伝いはきっと必要になるんだ。だから、明日の朝の回診の時、一緒に行ってくれないかな?朱鳥の回診は一番最後だから。それで、大丈夫かどうか決めればいいしさ。」

「おう、そうだな。そーするか。じゃ、明日の朝俺の手持ち患者の回診が終わったら、合流な。」

そういって、俺たちは別れた。