朱鳥が熱を出した。

朱鳥は、治療を開始すると、1日目に必ず熱を出す。

そして、その後は上がったり下がったりで辛そうだ。

今日も、ナースコールで駆けつけると、顔を真っ青にして吐いていた。

本当は、今すぐにでも"大丈夫だよ"と言って、抱きしめてあげたかったが、無菌室に居るため、それは出来ない。

吐き気が収まった後も、気持ちが悪そうで、目をギュッと瞑って必死に耐えていた。

朱鳥が眠った後も、しばらく朱鳥の傍に居たが、朱鳥は、辛そうな顔のまま涙を流し眠っていた。

その後、俺はまだやらないといけない事があったので、朱鳥の枕元に

"起きたら呼んで"

という、書き置きをしてきた。

まだ、しばらくは起きることはないだろうが、起きた時に、また気持ち悪さで吐いていたら可哀想だから、すぐに行けるようにはしてある。

しばらく医局で仕事をしていると、気付くと4時間近く経っていた。

時刻は17時。

もうそろそろ、回診に行こうかな……

そう思い、まずは普通病室の患者さんから回診をしていく。

パパッと回診を済ませ、次は朱鳥の病室だ。

無菌室に入るから、普段しないマスクを付けて、念入りに消毒をする。

コンコンッ

ガラッ

病室に入ると、朱鳥は、まだ辛そうな顔で眠っていた。

また熱が上がったのか、顔は真っ赤で、汗をビッショリとかいていた。

1度、起こした方がいいと思い、そっと朱鳥の肩を叩く。

「朱鳥ー、1回起きてー、回診だよー」

そう呼びかけると、朱鳥はゆっくり目を開けた。

「…………楓摩…」

「朱鳥、大丈夫?暑くない?」

「……あ…つぃ…………」

「じゃあ、ちょっと体温計ってもいい?」

コクン

朱鳥の脇に体温計を挟み、体温を計る。

ピピピピピッ♪

体温計に表示されたのは、39.8の文字。

40度近いな……

このままだと、熱のせいでもっと体力を消耗してしまう。

だから、早く熱を下げないといけないんだけど……

「朱鳥、ちょっと強い解熱剤使ってもいい?」

コクン

よっぽど辛いのか、朱鳥は素直に頷いてくれた。

「じゃあ、俺、それ取ってくるから少しだけ待ってて。あと、水分も採ってほしいから、そこのペットボトルにストロー刺しておいたから飲んでね」

コクン

そう、頷いたのを確認し、俺は病室を出た。