「愛依、俺さ、失恋しちゃった…ハハッ…………」

陽向先生は、笑顔のまま、そう言った。

「え……」

「俺さ、好きな人いたんだ。でも、その好きな人にも好きな人がいたみたいなんだ……」

「………………」

突然過ぎて頭が追いつかない。

「その、俺の好きな人の好きな人が、俺親友なんだ。俺な、本当は仲良くしたいんだ。けど、やっぱり、悔しくてさ、口先では明るく振舞ってるけど、本当は、すっごいヤキモチ焼いてる。」

「………………」

「愛依も、そうなんじゃない?俺みたいな、三角関係とかじゃなくてもさ、本当は、朱鳥ちゃんと仲良くしたいのに、悔しくてできないって事ない?」

陽向先生は、本当に鋭い所を突いてくる。

「………………ある…」

陽向先生には、別に隠す必要もないと思ったので、正直に答えた。

「そっか。そーゆーのって、辛いよな。仲良くしたいのはわかってるんだけど、出来ないんだもんな。それで、どんどん自分の事、責めちゃうんだろ?」

コクン

そう、頷くと陽向先生は、よしよし と頭を撫でてくれた。

「そっか。そっか。本当は、仲直りしたいんだもんな。でも、自分では言い出しにくいよな。」

コクン

陽向先生は、本当に私の心を読んでいるみたいだ。

でも、ずっと浸っていた自己嫌悪をそうやって、共感して、慰めてくれているのが嬉しくて、ホットして、目頭が熱くなる。

「よしよし。大丈夫だよ。自分の事、責めなくてもいいから。気持って複雑だよな。めんどくさいよな。だから、わかんなくなっちゃうんだよな。」

コクン

そう、頷いた瞬間、ポロッと涙が零れた。

「泣かなくても大丈夫だよ。俺は、愛依も朱鳥ちゃんも悪い子じゃないの知ってるから。2人共、お互いに悩んでるんだもんな。女の子は、大変だな。でもさ、今くらい、1人で悩んでるのやめて、俺に話してごらん?きっと、気持ちが楽になるよ。」

コクン

それから、私は、声を出して泣いた。

今まで、心に貯めていた全ての嫌な感情を吐き出すようにして、泣き続けた。

涙が溢れて止まらなかった。