朱鳥が微熱を出した。

今日は、2人で映画に行く予定だったので、朱鳥もとても楽しみにしていたので、困った。

今日は、止めさせようと思ったが、明日の検査を頑張るという事で行く約束になっていたし、明日から入院して、また治療が始まるのでしばらくは外出もできない。

あれだけ期待させておいて、可哀想だよね……

絶対に、この後、熱が上がるのはわかっていたので、三つだけ約束をして、映画を許可した。

俺も、付きっきりでいられるから、何かあったすぐに病院に行くことにした。

朱鳥に、帰りに病院に行く事を約束したので、きっと、そのまま入院かな……

そんな事を考えながらも、朱鳥とは楽しい話をして、車を運転する。

30分くらいすると、目的の映画館に着いた。

「朱鳥、映画館着いたけど、1回診察させて?」

「え?さっき、やったばっかりじゃん」

「でも、こまめに診察するっていう約束でしょ?熱だけでいいから計って。」

「はーい」

朱鳥は、少し不満そうだったが、約束をしてあったので、ちゃんと体温を計ってくれた。

ピピピピピッ♪ピピピピピッ♪

「37.2……やっぱり、上がってきてるね…。」

「え……映画…………ダメ?」

「……映画は見せてあげる。せっかく、ここまで来たしね。でも、映画終わったら、寄り道しないで真っ直ぐ病院かな。」

「わかった……」

念のために入院セットと、医療バックも持ってきたから、大丈夫だろう。

「でも、映画中でも具合い悪かったら言わないとダメだからね?わかった?」

「わかった……」

「よし!じゃあ、気持ち切り替えて!!映画楽しんでこよ?」

「うん」

朱鳥も、納得してくれたようで、笑顔で頷いてくれた。

映画館に着くと、わりと空いていた。

朱鳥が観たいと言っていた映画もいい席がとれた。

映画が始まる時間まで、少し時間を潰してから、ポップコーンとジュースを買い、席に着く。

何かあっても対応できるように、後ろ側の通路に面した席にした。

ここなら、人も空いているので、朱鳥も人目を気にすることなく鑑賞できるだろう。

しばらくすると、映画が始まった。

恋愛系の物語で、男の俺でも少しキュンキュンしてしまった。

映画も、あと少しで終わりそうという所で、朱鳥が俺の肩に頭を預けてきた。

なにかあったのかと、思い、片手で、朱鳥のおでこに触り熱を確認、もう片方の手で脈を計る。

少し脈が早いな……

「朱鳥、大丈夫?」

そう、小声で聞くと、朱鳥はウウンと首を振った。

「具合い悪い?」

コクン

「どんな感じ?頭痛い?寒気ある?目眩?吐き気?」

「頭……痛ぃ…………寒い………」

「熱、上がったかな……」

ふと、スクリーンをみると、もうエンドロールだ。

「朱鳥、今、エンドロールだから、あと少しだけ待てる?」

コクン

そう言って、苦しそうに目を瞑った朱鳥に、俺の着てきたコートを掛ける。

これで、少しは寒くないだろう。

1分も経たないうちにエンドロールも終わり、みんな続々と帰っていった。

俺も、朱鳥に上着を着せ、荷物を持ち朱鳥を抱っこして映画館を出る。

車の後部座席に朱鳥を寝かせて、診察を始める。

「朱鳥、熱計るね。」

ピピピピピッ♪ピピピピピッ♪

「38.6か……一気に上がったな。じゃあ、次、聴診するね。」

喘息は、なさそうだけど、熱のせいか、少しだけ息が荒いな。

「朱鳥、熱、辛そうだから解熱剤打つよ?」

ウウン

「ごめん、嫌でもやるね。このままだと、もっと熱上がるだけだからさ。ごめんね」

素早く用意して、解熱剤を打つ。

「……痛ぃ…………」

「…ごめんね……」

とりあえず、ブランケットを掛けて、朱鳥を寝かせる。

「朱鳥、今から病院行くね。辛かったら、言ってね」

車を運転して、急いで病院へ向かう。

運転している間も、朱鳥は辛そうだった。

夢を見ているのか、少し、うなされていて、とても可哀想だった。

15分ほどすると、病院に着いた。

俺は、朱鳥を抱っこして、急いで診察室へ向かった。