「朱鳥、もし、辛くなかったらでいいから昔の事も話してくれる?」

「…………ぃぃょ…」

「じゃあ、ゆっくりでいいから、教えて?」

コクン

「……わ、私ね…両親に捨てられたんだって…………それで、施設に預けられてたんだけど、そこに遠い親戚の人が来てね、私を引き取ったんだって……」

「うん」

「それでね、最初は、優しかったんだけどね……私が来たことでね…………私がっ!!……グスッ…………来たせいで………だんだん、お金が無くなっていってね………すごい貧乏に…なったって……それで、親戚の叔母さんが……………じ…さつ……したんだって……。」

朱鳥は、ポロポロと涙を流しながら、話し続ける。

「だからっ……グスッ…………お前なんて、引き取らなきゃ良かったって…………お前なんて、いなきゃ良かったのに…って言われて………………いっぱい、怒られて……………全部、私が悪いんだって……泣いても………ダメだって…叩かれて……それでっ………グスッ…」

「ありがとう。話してくれて。そっか。辛かったね。もう、大丈夫だからね。もう、辛い事はないよ。大丈夫。俺がいるから。もう、泣いてもいいんだよ。朱鳥が思ってる事、我慢しないで言ってごらん?気持ちがスッと軽くなるからさ。」

そう言うと、朱鳥は、俺にギューッと抱き着いてきた。

「ふぅまっ!!…グスッ、私、産まれたらダメだったの?私、いらない子なの?………………っ!!……そんなに、私、ダメ!?…他の子は、楽しそうに家族と暮らしたりしてるのに、私だけ、楽しむ事も許されないの?私だって、もっと普通の事、してみたい!!ワガママも言ってみたい!!……グスッ…私だって…………生きたいんだもん……」

俺は黙って、朱鳥を抱き締め続けた。

「…………学校に、行けば、なんでそんなに怪我してるんだって……
なんで両親がいないんだって………
そんなのおかしいって…みんなに笑われて………………
私が怒ったら、また、全部私が悪いって言いつけられて…
それで、学校に親戚の人が呼ばれて……そこでは、いい顔してるのに…………
家に帰ったら………………すごい、怒られて………
お前は、なんで、そんな、悪い子なんだって…………
悪い子はいらないって言われて……
お仕置きしないとって言われて……………
ご飯、くれなくて…手すりに手と足縛られて…動くのもダメだって…声を出すのもダメだって…
いっぱい殴られて…蹴られて…泣いたら、その分殴られて…
そのまま……3日間…縛られたまんまで……」

朱鳥に聞いた親戚の話はとても残酷だった。

体にも心にもトラウマが残ってもしょうがない様な残忍な暴力と言葉。

言い終わった後には、朱鳥自身、思い出してしまったのか、涙で目を腫らして、震えていた。