「朱鳥、傷、酷いね……。このままだったら痛いから、処置しちゃおっか。」

ウウン

朱鳥は、首を横に振った。

「嫌だ?怖い?」

コクン

今度は、縦に頷いた。

「そっか。じゃあ、ちょっと寝よっか。昨日も寝れなくて辛かったでしょ?朱鳥は、今、心も体も疲れちゃってるから、しっかりと休んだ方が良いよ。」

朱鳥は、とても疲れきった顔をしていた。

昨日も、ろくに眠れず、ここまで酷い暴力を受けて、でも、なによりも、それを1人で全部我慢して背負ってたから、心が疲れてるんだろう。

ソファーに、寝かせて毛布を掛けてあげたら、朱鳥は、すぐに目を閉じた。

10分くらい経つと、スースーと、規則正しい寝息が聞こえてきて、朱鳥が寝たことがわかった。

俺は、さっき出来なかった傷の診察と処置を始めた。

酷いとは、思っていたが、診察をしてみると、改めて、酷さがわかった。

顔にも、青いアザが出来ていて、血は止まったみたいだったが、鼻の下に血の跡が出来ていたから、きっと鼻血が出たんだろう。

骨は大丈夫かな?

見た目は大丈夫そうだけど、やっぱり詳しくレントゲン検査とかしないとわかんないな。

腕や足にもアザが出来ている……

こんなに、沢山…………

青いアザだけじゃなくて、所々内出血もしてるから、そうとう酷かったんだろう。

きっと、とても痛かったと思う。

俺が、もっとちゃんとしてたら……

「……ごめんね…………朱鳥。痛かったね…、怖かったね、辛かったね。よく、我慢したね。」

一通り処置をしてから、俺は朱鳥の頭を撫でた。

やっぱり、怪我が心配だから、朱鳥が目を覚ましたら病院に行こう。

朱鳥は、きっと嫌がるよね。

けど、無理矢理にでも連れていかないと、もっと怪我が悪化してしまう。

だから、なんとか説得して、病院に行って、検査と治療が終わったら、すぐに家に帰って、朱鳥と話し合おう。

これまでに、何があったのか。

どんな事をされたのか。

そして、朱鳥は今、どんな気持ちなのか。

全部話してもらった上で、なにか力になれないか考え、対策をとろう。

そうじゃないと、いつか、感情が爆発して、きっと大変な事になる。

朱鳥は、自分で感情をコントロールするのが苦手だから、きっと、まめに少しずつ吐き出させてあげないとだめだ。

俺、全然、朱鳥の事知らないな。

大まかにしか聞けてない。

さっき、傷を見た時も、さっきやられたものと、昔にやられたものがあった。

というより、昔にやられた傷の方が多かった。

主に腹部。

お腹の方にアザが集中していて、それに、所々切り傷やタバコを押し付けられたような跡もあった。

俺には、わからないくらいの苦痛と痛みを朱鳥は、経験してきたんだろう。

まだ、こんなに小さい体で……

朱鳥は、どんな気持ちだっただろう。

今よりも小さい時、こんなに酷い暴力を毎日受けて、ご飯も貰えなかったら……

そう考えると、とても悲しい気持ちになった。