コンコンッ

ガラッ

「楓摩ー、ちょっと用事が……って、朱鳥ちゃん、目、覚めたんだね。おはよ。んで、楓摩は……何してんだ?」

あ、陽向先生だ。

陽向先生は、苦笑いで聞いてきた。

楓摩は、未だに、私の事を抱きしめながら、泣いている。

「お前、泣いてんのか?朱鳥ちゃん、困ってんだろ。一旦、落ち着いて離れろ。」

楓摩は、陽向先生に言われた事を無視してる。

私は、苦笑いをするしかなかった。

「ほらっ、楓摩離れろ。」

陽向先生が、私から楓摩を引き剥がす。

「んーん……朱鳥…グス…………」

「ん?あれ、お前、なんか熱くないか?」

陽向先生は、急に医者の顔になった。

確かに、楓摩の顔は少し赤く、息も荒い気がした。

「楓摩、ちょっと持ち上げるぞ。」

そういうと、陽向先生は、楓摩をヒョイっと持ち上げた。

いつの間にか、移動していた私の病室は、二人部屋らしく、陽向先生は、楓摩をもう一つのベッドに寝かせた。

「楓摩、ちょっと熱計って。」

そういうと、楓摩は、ノロノロとした手つきで熱を計った。

ピピピピピッ♪

楓摩から体温計を受け取った陽向先生は、驚いた顔をした。

「お前、今日は、このまま、ここで寝てろ。」

「…でも、……仕事…………」

「いいから、40度近くも熱あるやつに、仕事させてられないから。医局長には、俺から言っとくから、黙って寝てろ。」

すると、陽向先生は、私の方へ来て、イスに座った。

「朱鳥ちゃん、楓摩からなんか説明とかしてもらった?」

首を横に振る。

「あいつ、取り乱しすぎだろ(笑)んーと、簡潔に言うと、朱鳥ちゃんは意識を失ってから、3週間くらい寝てたんだ。だから、栄養も取れないし、水分も取れないから、点滴してるんだ。でも、もう目、覚めたしこれ、外すね。声が出ないのも、喉の水分が少ないからだと思うから、後で、ちゃんと水飲むんだよ。」

コクン

すると、陽向先生は慣れた手つきで点滴を外してくれた。

「あとは、朱鳥ちゃんが寝てる間に、治療と検査は終わったよ。まだ、治療は必要だけど、一時帰宅はできるって、楓摩が言ってたからさ。楓摩と朱鳥ちゃん、2人の体調が戻ったら退院できるんじゃないかな?」

その報せに、思わず顔がほころぶ。

「じゃあ、ゆっくり休んでね。あ、あと楓摩の監視も頼むね。なんかあったら、ナースコール押してね。」

そういうと、陽向先生は、病室を出ていった。