「朱鳥、一つ聞いてもいい?声、出しにくかったら筆談でもいいからさ。」

コクン

きっと、あの時の事だろうな……

「朱鳥、この前、点滴の針が抜けた時、血が出てたのに、なんでナースコール押してくれなかったの?」

楓摩は、怯えたような顔で聞いてきた。

やっぱり、そうだよね……

楓摩に紙とペンを貰って、頑張って書く。

やっぱり、まだ上手く力が入らなくて、文字が震えてしまう。

”その事は、ごめんなさい。
私、もう、何もかも嫌になっちゃって。
気付いたら、自分で針、抜いちゃって
そしたら、血が出てきて
なんか、それみてたら安心したの。”

なんとか、書き上げたけど……

こんな事書いたら、私、引かれちゃうかな?

恐る恐る、楓摩の顔を見る。

楓摩は、とても悲しそうな顔をしていた。

「……それで、ナースコール押さなかったの?」

私は、また紙にペンを走らせた。

”それでね、血をみてたら、いつの間にか時間が経っててね
なんか、ボーっとしてきて
私、このまま死ぬのかな…って
でも、もう辛くないなら、それも良いかなって
思ったの”

「……っ!!」

楓摩は、もう、これ以上見たくない…というように、目をギュッと瞑って、唇を噛んだ。

「やめて…………もぅ…それ以上……そんな事言わないで………」

やっぱり、こんなのおかしいよね……

こんな感情になるなんて、どうかしてるよね…

”ごめん”

すると

楓摩は、私の事をギューッと抱きしめた。

「ごめんね…朱鳥、俺、こんなになるまで朱鳥を追い詰めた。本当にごめん!だから、もう、こんな事言わないで……死んでもいいなんて思わないで!俺、朱鳥がいないと生きていける気がしないから……」

楓摩は、泣いた。

だんだん、大きくなっていって、最終的に声をあげて泣き出した。

「朱鳥ぁっ……ごめんな…グス……………本当に…ごめんな……ヒック………絶対に死んじゃダメだからねっ!そしたら…俺……俺っ!」

私も、楓摩の事を抱き締めた。

そして、いつも、楓摩がしてくれるみたいに、楓摩の背中をポンポンとした。

とても、温かかった。